スパッタシート

スパッタシート
スパッタシート

スパッタシートとは、溶接や溶断、研磨・研削・切断などの熱加工現場で飛び散る高温の火花やノロ(非金属製のカス、スラグともいいます)を受け止める耐熱シートです。
火花や金属粒、ノロ(スラグ)を総称してスパッタといい、スパッタシートはスパッタから現場を守るシートです。
火花は 1,200 ℃に達することもあり、5-10m近く飛ぶ場合があります。これらに可燃物が触れると火災の恐れがあり、作業終了後に出火するケースもあります。

スパッタシート誕生の背景

19 世紀にアーク溶接が登場してから金属加工は飛躍的に効率化しましたが、同時にスパッタによる火災が新たな課題となりました。かつてはアスベスト布で対応していましたが健康被害が明らかになり、20 世紀後半にはガラス繊維・シリカ繊維・耐炎アクリル繊維などノンアスベストの耐火素材が登場します。これらをシート状に仕立てた製品が、現在のスパッタシートとして定着しました。

主な素材と特徴

シリカ繊維 ― 瞬間 1,600 ℃、連続 1,000 ℃まで耐えられるため、最も高温のスパッタを受け止められます。ただし生地が硬めでチクチクしやすい点が難点です。

耐炎繊維(カーボン化アクリル) ― 柔らかく折りたたみやすい一方、連続耐熱は 250 ~ 450 ℃程度にとどまります。

ガラス繊維 ― 価格と性能のバランスに優れますが、肌への刺激が気になる場合があります。

ハイブリッド素材 ― 炭素繊維やアラミド繊維を組み合わせ、引き裂き強度や軽さを高めた製品も登場しています。

コーティングの有無による違い

コーティングあり

シリコンなどを塗布したシートは火花を弾くため、シート表面にノロが残りにくく清掃が容易です。弾かれたスパッタが周囲に飛ぶ可能性があるので、周辺を追加のシートで養生すると安心です。

コーティングなし

素地のままのシートは火花を付着させて散乱を抑制します。可燃物が多い現場や飛散範囲を最小限にしたい場合に適していますが、付着したノロの清掃や早めの交換が必要です。

JIS A 1323 の難燃性試験

国内で流通するスパッタシートの多くは、建築用薄物材料の難燃性試験 JIS A 1323 に適合しています。

区分適用・特徴
A 種9 mm 鋼板をガス切断した火花に対して発炎・貫通孔が発生しない。厚板溶断など最も過酷な現場向け。
B 種4.5 mm 鋼板レベルに適合。一般的な溶接・切断でコストと安全性のバランスが良い。
C 種3.2 mm 鋼板レベルに適合。軽作業や広範囲の養生向け。火花量が多い場合は二重敷きを推奨。

研削・研磨・切断作業での活用

グラインダによる研削火花は粒径 0.1 ~ 0.2 mm と非常に微細で質量が小さいため空気抵抗の影響を強く受け、四方へ広がりやすくなります。床だけでなく垂直面や天井近くまで飛ぶため、床敷き用シートとカーテン状シートを組み合わせて三次元的に覆うと効果的です。切断ノロは粒が大きく高温で落下距離が長いため、厚手フェルトやシリカ繊維を複数枚重ね、集積点を重点的に守ることで貫通を防げます。