一般鋼

一般鋼の製品イメージ
一般鋼を使用した建築用鋼材の例

一般鋼とは一般鋼材の略称で、普通鋼とも呼びます。鋼に炭素以外の元素を添加しておらず、また炭素含有率が0.6%未満のものをいいます。
炭素含有率が低いほど鋼は柔らかくなるため、一般鋼は加工しやすい鋼であると言えます。その加工のしやすさから生産量も多く、非常に多くの分野で用いられています。

「一般鋼」はどこまでを指すか

「一般鋼」という単語の明確な定義や規格は存在せず、慣習的に呼ばれている範囲はあるものの、それもケースごとにゆらぎがあります。汎用性や手に入りやすさが高いものを総称して「一般鋼」とよぶこともあれば、SS材と言われる一般構造用圧延鋼材(JIS G 3101)、SPC材と言われる冷間圧延鋼板及び鋼帯(JIS G 3141)、SC材といわれる機械構造用炭素鋼鋼材(JIS G 4051)の一部を含む概念であることもあります。

炭素含有率による違い

鋼とは、鉄に炭素を0.02%~2.14%の範囲で加えた合金です。0.02%未満を鉄、2.14%以上のものを鋳鉄と呼びます。炭素をどれだけ加えるかによって特性が変わるため、含有率に応じて0.02%~0.25%のものを低炭素鋼、0.25%~0.6%のものを中炭素鋼、0.6%~2.14%のものを高炭素鋼と分別されます。
先述した通り一般鋼は炭素含有率が0.6%未満のものをいうため、低炭素鋼および中炭素鋼に該当することになります。高炭素鋼のことは工具鋼とも呼ばれます。

鋼の分類

種類 炭素含有量 特徴 主な用途
低炭素鋼 0.02%~0.25% 柔らかく、加工しやすい。溶接性にも優れる。 自動車のボディ、建築材料、パイプなど
中炭素鋼 0.25%~0.6% 強度と硬度が増し、耐摩耗性が向上する。 機械部品、歯車、ボルトなど
高炭素鋼 0.6%~2.14% 非常に硬く、耐摩耗性に優れているが、脆くなる。 工具、刃物、バネなど

鋼の五元素

鋼には、人為的に加えた炭素以外にも必ず含まれる元素があります。これらは総称して「鋼の五元素」と呼ばれ、それぞれがさまざまな特性を持っています。

元素名 特徴
炭素(C) 鋼にとって最も重要な元素です。炭素の含有量によって鋼の硬さが決まりますが、多く含みすぎても脆さが出てきます。
ほとんど鋼を含まない(含有率0.02%以下)ものを純鉄といい、0.02%~2.14%を鋼鉄、2.14%~6.67%のものを鋳鉄と呼びます。それ以上の炭素を添加すると実用性に乏しくなるため、特に分類して呼ばれることはありません。
ケイ素(Si) ケイ素は酸素と親和性が高いことから、ケイ素を添加すると鋼の中の酸素と反応を起こし酸素量を低下させる脱酸作用が働き、耐食性を得ることとなります。
鉄にケイ素を添加したケイ素鋼と呼ばれるものがありますが、これには炭素が0.02%以下しか含まれず鋼の定義から外れるため、ケイ素鉄とも呼ばれます。
マンガン(Mn) 靭性の向上や、有害物質であるリンとの反応が良いことからその除去のために添加されます。マンガンの添加量を上げるとマンガン鋼という合金鋼となり、張力、耐摩耗性、耐衝撃性を得ることとなります。
リン(P) 鋼にとっては有害な元素であり、鋼を脆くさせる性質を持ちます。特に低温時の脆さを高めます。
硫黄(S) 硫黄は鋼にとって有害で、鉄と反応して硫化鉄を作ります。この反応により、鋼の融点が約300℃低くなり、高温時に脆くなる性質(赤熱脆性)が生じます。ただし、硫黄には削りやすくなる特徴があり、適度に硫黄を加えることで「硫黄快削鋼」という鋼が作られ、加工がしやすくなります。