ジルコニア

ジルコニアとは、酸化アルミニウム(Al2O3)と酸化ジルコニウム(ZrO2)を溶融・急冷して得られる人造研磨材で、重研削や高荷重研磨に用いられます。1960 年代に米国ノートン社が NorZon の名称で上市したのが始まりで、現在ではAZ 砥粒(A=アルミナ、Z=ジルコニア)の略号が本材の通称として広く使われています。
特徴
アルミナジルコニア砥粒は、アルミナとジルコン砂を高温で溶かし急冷することで、両者が微細に絡み合った共晶組織を得た研磨材です。
加工中はこの共晶組織が微細に割れて常に新しい刃先を生成し、ジルコニアの靱性も相まって鋭い切れ味と長寿命を両立します。
特徴
特性 | 内容 |
---|---|
高靱性 | 強い衝撃下でも割れにくく、砥粒端面が欠けながら切れ味を維持 |
自己鋭利化 | 微細破砕により常に新しい切れ刃を再生成 |
高耐摩耗 | 共晶組織により脱落しにくく、長寿命 |
発熱低減 | 切りくず排出性と自生作用で研削温度を抑制 |
歴史
1960 年代、米国 Norton 社がアルミナと ZrO2 を共融させた研磨材「NorZon」を開発したのが商業化の始まりです。その後各メーカーが独自改良を重ね、現在では砥粒含有 25〜40 % ZrO2 の多孔質タイプなど多彩な派生製品が登場しています。
他の研磨材との比較
研磨材 | 硬度 | 靱性 | 自生作用 | 熱安定性 | 価格 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|---|---|
アルミナ (Al2O3) | ★★★★☆ | ★★★☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★★ | ★★★★★ | 一般研削 |
カーボランダム (SiC) | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | 非鉄・脆性材 |
アルミナジルコニア | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★☆☆ | 重研削・高荷重加工 |
ダイヤモンド | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | ★☆☆☆☆ | ★★☆☆☆ | ★☆☆☆☆ | 超硬合金・アルミ・セラミックスなど非鉄脆性材 |
CBN | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★☆☆☆ | 高硬度鋼・焼入れ鋼など鉄系難削材 |
※上記の比較は一般的な傾向を示したものであり、実際の研削性能はワーク材質や研削条件(回転数、切込み量、冷却など)によって変動します。選定時は用途や条件に応じた評価が必要です。
適した研削方法・ワーク
- 平面研削・円筒研削などの重研削: ジルコニアは切り込み量が大きいアグレッシブな研削条件でも砥粒が欠けにくく、高い研削力を長時間維持できます。
- 鋳鋼・ステンレス鋼・高張力鋼など高強度金属: ジルコニアは優れた靱性と切れ味により、通常のアルミナ砥粒では効率が落ちる高靱性金属でも摩耗を抑えつつ高能率加工が可能です。
- 鋳物バリ取り・溶接ビード除去など高荷重ハンドグラインディング: ジルコニアは手作業で大きな押し付け力がかかっても砥粒が破損しにくく、高い除去能率を発揮します。
- バレル研磨用メディア: ジルコニアは硬さと耐摩耗性に優れ、メディア自体の消耗を抑えながらワーク除去量を確保できるため、高研削比が要求されるバレル加工にも適します。
まとめ
ジルコニア砥粒(アルミナジルコニア砥粒)は、高い靱性と耐摩耗性を武器に重研削で真価を発揮します。 アルミナより長寿命、 炭化ケイ素より強靱というバランスから、鉄系重切削や量産ラインでの省コスト化に寄与する研磨材です。