ドレッシング
ドレッシングとは、研削砥石の性能を維持・回復・最適化するために砥石表面の目詰まりや目つぶれを除去し、新しい砥粒を露出させる作業です。
ドレッシングは目直しと言われ、ツルーイングは形直しと言われることがあります。これら2つは用語や概念としては分けることができますが、ツルーイングとドレッシングを同時に行える装置も存在するため、工程としては同じ段階で行われることが多いです。
ドレッシングの目的
研削を続けると砥石表面には削りカスが詰まり、砥粒が摩耗します。これらを除去し新しい砥粒を露出させることで切削力を取り戻すのが第一の目的です。同時に偏摩耗で崩れた砥石形状を修正し、安定した寸法精度を確保します。さらに、適切な表面粗さに整えることでワークの仕上げ面も均一になり、不良の発生を抑えられます。
自生作用との関係
本来、砥石は作業中に砥粒が自然に破砕・脱落し、新しい切れ刃が次々に現れる「自生作用」によって自己再生します。結合力が比較的ゆるい ビトリファイドボンドや粗加工の高負荷条件ではこの作用が十分に働きますが、レジンボンドやメタルボンドなど結合力の強い砥石、あるいは仕上げ研削のような低負荷条件では砥粒が割れにくく目詰まりが進行しがちです。ドレッシングは、この自生作用を人工的に引き起こす作業といえ、外部から砥石に機械的負荷を与えて摩耗した砥粒を計画的に除去し、新しい切れ刃とチップポケットを創出します。
砥石の機械的性質と寿命への影響
ドレッシング条件が適切であれば、砥石は自生作用を促進しながら長寿命で安定した研削力を維持します。条件が不適切な場合は砥石が早期に摩耗・破損し、焼けやビビリなど加工不良が発生するほか、安全面でも重大なリスクとなります。
ドレッシングの状態 | 切削力 | 形状精度 | 仕上げ面 | 砥石寿命 | 主なトラブル |
---|---|---|---|---|---|
適切 | 高く安定 | 良好 | 均一で滑らか | 延長 | - |
未実施 | 低下・不安定 | 崩れる | 粗く不均一 | 短縮 | 目詰まり、焼け |
不適切 | ムラ | 不正確 | マーク・ビビリ | 短縮 | 螺旋マーク、早期摩耗 |
ドレッサの種類
砥石を整える工具として最も広く使われているのはダイヤモンドドレッサですが、実際には砥石や加工条件に合わせてさまざまな材質・構造のドレッサが用いられています。ここでは代表的な例を挙げ、それぞれの特徴と適用範囲を示します。
ダイヤモンドドレッサ
ダイヤモンドは工業材料の中で最高クラスの硬度を持つため、ほとんどの一般的な砥石に対して確実に切り込めます。単石タイプ、ニブタイプ、ニードルタイプなど形状は多彩で、ビトリファイド砥石やレジン砥石のツルーイング・ドレッシングに広く採用されています。
焼結アルミナ・グリーンシリコンカーバイドスティック
ダイヤモンドホイールの砥粒は非常に硬く欠けにくいため、より軟らかい材質である白色アルミナ(WA)やグリーンシリコンカーバイド(GC)のスティックを使って、ホイールの表面に局所的な応力を加え、自生作用を促進します。
ロータリードレッサ/クラッシュロールドレッサ
外周に焼結CBN やダイヤモンドを固定した鋼製ローラを回転させ、砥石表面を高精度に整える方式です。形状の再現性に優れ、大径砥石や複雑な形状をした砥石に対して効率的にドレッシングを行えます。CBNは高温環境でも鉄と化学反応を起こしにくいため、鉄鋼ワークのラインで使用されることが多く、ダイヤモンドでは不向きなケースに適しています。